近代化した民主主義へ

選挙、電子投票などについてを語り、政治の幼稚さをぼやきます。(笑)

電子投票の構想から現代まで

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 20年以上前の民間企業の研究会だった頃に、世界に先立て発表した電子投票構想です。今のマイナンバー(個人IDカード)で投票するシステムで、90年代後半にロシアで実証実験をしました。

 私も若かった頃は、アラン・ケイの書籍を読んでアレコレと夢を描きました。 (笑)  【これが第一段階目かな】

 そして、膨らんだ夢を具現化に向けて削ぎ落とし、さらに投・開票という確実性の追求で技術を絞り込みます。
 【これを第二段階目とします】

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 それを、すべての有権者が理解出来るアクセシビリティの範囲を模索する為に、実験と啓発を兼ねて日本のみならず世界中を飛び回った時代の英文パンフです。
 【まだまだ第三段階目です】

 今度は、海外で実証実験に結びついた時に、その国の言語のパンフレットだけでなく、システム仕様書からマニュアルまでの総てを作成し、投票者だけでなく実施側に正確にインターフェースの理解を得ることの大切さを学びます。
 【やっと第四段階目ですね】

 皆さんは「最新技術」という言葉に惹かれますが、我々は国民の理解が得やすい「長く一般的に普及し安定した技術」で検証し尽くされた物と、アイディアで構築したノウハウによる信頼性重視に変わって行きました。また、それが言葉の壁がある海外の人々にも理解が得やすい事を学びました。
 【第五段階目ですが基本が見えてきただけです】

 今では当たり前のように世界中が電子投票を国政選挙まで導入して、ネット投票も実施しているのに、日本では四半世紀前のパンフレベルにも進んでいません。
 それは、居心地の良い空想を楽しむ趣味の第一段階目から抜け出せない何かが有るのかも知れません。そんな血の通わない机上の空論だけで、生きた外を見ることを怠るから、投票弱者への配慮も、当初政府が約束していた国政選挙導入などの制限も解除されていない環境の中で実施している自治体のことも考えず、非現実的な話ばかりで放置ができるのでしょう。

 このパンフの構想で市民権を得たのは、悲しい事に法的規制が無い「電子投票」という言葉だけでした。

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 遠い昔で忘れられていますが、15年前の沖縄サミットやEU議会(私のTwitter、Facebookカバー写真に使用)では無線通信で集計まで披露し、そのシステムは英国の公職の選挙でも使用され好評でした。そして、英国は国政選挙での実験導入へ進みましたが、米国企業の投票システムが致命的なトラブルを起こし機運が消えました。その後のフランス国政選挙で実験導入された電子投票でも、システムトラブルを引き起こしたのが同じ米国企業です。

 英国、フランス両国から我々に入札のオファーがありましたが、日本の導入に手間取っている事を伝えてお断りしました。実験導入を失敗した英国からは「貴方たちが参加しなかったから、英国の電子投票導入機運が止まった」という趣旨のメールを頂きました。

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  アンティークな部屋の写真は、英国上院議院内で電子投票の説明をした時のものです。
焚き付けときながらの辞退は、本当に失礼な話しだと自覚しています。しかし、国内の電子投票が間違った方向に進みだし、その結果、英国国政選挙実験導入と同年に電子投票を実施した海老名市、可児市は訴訟に発展しました。

 総務省の研究会が、投票機1台の販売価格40万円を目標にした報告書を出していた時代に、英国はレンタル価格で36万円の高待遇でしたから、本当に内部では迷いました。最後は、私が国内優先を主張して辞退が決定しました。国内で電子投票が消えても海外から黒船として戻って来る道も有ったかも知れませんが、国民に迷惑を掛けない為に、国内で続ける事で道を切り開く選択をしました。しかし、想像を超えた隠蔽による無残な失態は、世界でも未だに有り得ない選挙無効判決を受け、我々の努力は焼け石に水となった。

 この時の国内の間違った方向とは、我々が普通に連続して実施成功をした事で、過剰な不安からの反動もあり、後発システムは斬新さの商業的観点で営業を展開し、導入する自治体も楽観的に「楽」の視点で選ぶ浮ついた雰囲気になり、基本の「国民の正確な意思の反映」の言葉だけが残像として残ったもの、実態は何処かへ消えていました。

 事故を起こした米国企業は、投・開票用品の販売会社から電子投票に参入したという何処かで聞いたような話です。
 その後も、その米国企業は日本にも参入し、自治体コンペの時に、これまでに問題が有ったかの質問がありましたが、「no problem(問題ない)」と回答していました。
 エッ ( ̄◇ ̄ノ)ノ

 米国でもシステム的に疑念を持たれている投開票専門企業ですが、日本と似た匂いを感じる。

 米国もそんな状態ですから世界中で普及しているのは、米国では無く英国(元ベネズエラ)本社のスマートマティック社です。最高経営責任者(CEO)のアントニオ氏は若くて気さくな方だから話が面白いですよ。日本の電子投票の専門家も真剣に電子投票を考えているのなら、見聞を広める為にお会いする事をお勧めします。機械的なことよりも、全国一斉選挙を実施するときに役立つ考え方を持っています。

 真実とはこんなものですが、日本の米国至上主義の方が、うわべだけの知識で物を言うから間違った知識と悪いところを真似ているのでしょう。もはや米国は反面教師として学ぶ存在です。

 そこで、以前に諸外国の第三者認証検査の解説をすると書きましたが、やっぱり、人の資料で知ったか振りをするのは私のポリシーに合わないので、資料を提供してくれたScytl社に直に聞くと間違いが無いと思います。これも、上辺だけの情報だけが一人歩きをして、日本では自国でしか導入していない小国のエストニアのネット投票が優れていると有名ですが、Scytl社は公職のネット投票の世界最大手企業です。ネット投票についても勉強になると思います。日本の学者があまりにも粗末な議論で停滞させて市場が消えた日本と対照的に、正常に進めている海外のシステム特許を回避しての開発は困難でしょう。諸外国では多くの開発が進みScytl社も重要な部分で良い特許を多数持っています。

  2008年に電子投票改正法案が審議未了で廃案になった直後に、とある暗号学者が募ったシンポジュウムで「投票所の電子投票は古いから廃案になった」みたいな発言で、暗号を利用したネット投票を盛んに唱えていました。
 ショックを受けたのは、難しい複雑な数式の利用だけで、民主主義で大事な共生理念のかけらも無く、暗号の使い方が理解されていないことでした。シンポジュウムが終了して帰ろうと部屋を出た時に、総務省の通信専門の外郭団体の方が追いかけて来て「宮川さん、あんな内容で国民の理解を得られると思いますか?」と質問されましたが、折角の機運の出端を挫くよりも、これからの期待を込めて笑顔で返答するしかできませんでした。 その後はご存知の通り世に出てきていません。

 現在もネットで様々な暗号利用した電子投票を考案されている方々に水を差すようで恐縮なんですが、私のブログ「電子投票の投票データのあり方について」でも書きましたが、暗号化によって市民が理解できない投票データは疑念が持たれ、ドイツでは電子投票導入を中止した大きな要因になりました。これは、日本政府の見解でもあります。

 私のブログでも解説してありますが、我々の投票記録はドイツで問題にされる以前から平文です。

 現在の電子投票の法律では、第四条(電磁的記録式投票機の具備すべき条件等) の第二項に「電磁的記録式投票機は、電気通信回線に接続してはならない。」とあるのでスタンドアローンに適したセキュリティ対策はしていますが、簡単に説明ができる方式なので、国内の2件の電子投票訴訟(我々ではありません)がありましたが、2件の原告団が質問に訪れ納得した方式です。

 では、通信が可能になった場合は、どうするのか?

 考え方としては、投票記録データは平分ですが、データを入れてあるフォルダーにセキュリティを掛けるだけです。我々と同じ考え方で優れているのが世界の認証機関で認められ実用化されているScytl社の方式です。

 また、品格の無い国会議員などに利権と言われないように申しておきますが、大学の研究室から起業したScytl社とは、技術的な発想で馬が合う飲み友達なだけで利害関係ではありません。どちらかと言うと自分たちの考えが正しかった事を世界で証明してくれている事に感謝をしています。

 そもそも民主主義で大事な共生理念を知らない日本人とは、民度が違うから根本的に発想が異なります。例えば、日本で電子投票が進まない理由の一つに「一社しかできるところが無い」という利権説がありますが、これを海外の方に説明するのがとても難しい。単刀直入に、マイナンバーのように既得権益者とBid-rigging(談合)ができる間違った分配環境が無いと進まないなんて国家の恥を伝える事もできません。

 しかし、研究された物を国民の代わりに信頼された認証検査機関で証明できれば技術の進歩に合わせたサービスを考えることが可能になると信じています。

 このまま、国民から信頼される第三者認証検査機関も作ることを拒み、いまのマイナンバーのように国家政策だから強制でも黙っていろ的に進めれば情報が歪み、そのシワ寄せは未来に引き継がれます。

 最後に、暗号は数学であってセキュリティではありません。総合的な視点で考えると有効な使い方が有ると思います。

 今回の投稿は実験段階を書きましたが、まだまだ段階を踏まないと、今の実用段階に到達できません。

 民主主義の道具の理解と信頼と確実性を模索するのは、民生品よりも険しい道のりだと痛感しています。
 選ばれる側としては、金融システムや医療機器よりも信頼性を要求するでしょう。
 そして、学者の小手先の議論と政治家の選挙の勝ち負けだけの貧困な考えでは、信頼を失い参加する国民が減少し、社会実態と異なった歪んだ社会になります。

先ずは国民の範となるように政治が正しい分配を示さなければ、共生が実感できず、ネットや街で殺伐としたヘイトスピーチが横行して、醜い排除を求める社会が加速すると思います。

 しかし、電子的投票インフラが確立すれば、原始的な紙の投票では、どんなに議論を尽くしても死票が無くならない問題を解決できます。

 電子的機能を基に連記式投票や順位式投票なども視野に国民の正確な意思が反映できるようになります。比例代表制も並立制、連用制、併用制など日本の地理的な条件を考えられるようになり格差問題も解消できる方策が見つかるでしょう。

 それこそ、社会学、数学、統計学などあらゆる学問の出番になり学問も向上するでしょう。

 下記のような社会貢献ができない研究で無駄な時間と費用を費やすよりも、これからの社会に絶対に必要とされ、世界中でも模索されています。きっと、経済大国として諸外国へ血税をばら撒くよりも、健全な民主主義は高い評価を受けます。

www.gizmodo.jp

www.nikkei.com

 

 最後に、私がネット投票は手掛けないと公言しているのは、日本の政治家、行政、司法、学者、マスメディアなど影響力がある方々に、民主主義の根幹である投票結果が正当なプロセスを踏んでも国民が理解できないもので有った場合に、どう判断するのか勉強する機会を奪う気がするからです。摘んだ知識で横から口出しをしても何も解決できません。

 現状を説明すると、学者やマスコミは検証もせずに不正や失敗を煽り、政府は約束をも反故にしている無責任な状態です。根拠の無い疑念は実施している人々の尊厳を傷つけているから国内で電子投票を実施している自治体は、新見市と六戸町だけになりました。

 全く関係の無い他の自治体の事故による疑念を背負いながら、運用に瑕疵も無く10年以上も普通に継続しています。

 投票は重要としながらも立法府の無気力さで放置され、投票用紙による投票と電子投票を混在し続ける環境にいる人々も同じ国民です。謝罪の言葉も無いことに悲しみを感じます。